今年の冬は記録的な寒さが続き、桜の開花もずいぶん遅れると予想されていました。 しかし三月の声を聞くと、暖かな日が続き、開花予想も早まるばかりです。 三月当初の予想とはすっかり逆転し、桜は入学式迄もたないというのが結論になりました。
その桜が開花し始めた頃、コゲラが巣作りを始めました。 その情報はその日のうちに私の耳にも届いたのですが、別に慌てる必要もないだろうと構えていました。 実のところ、その場所はカラスやスズメが多いので、繁殖場所にはふさわしいとは思えなかったのです。 ところが、なんとその翌日から三日間雨交じりの天気が続くことになりました。 お陰で掘り始めの状態を撮り逃してしまいました。

雨があがった3月22日に出かけるとソメイヨシノはそれなりに咲き始めています。 目を凝らすとその幹にぽっかりと真ん丸な穴が開けられています。

コゲラの姿はどこにも見当たりません。 ここはかなり目立ちやすい場所なので、早くも営巣放棄をしてしまったのでしょうか?

それは私の早とちりで、間もなくコゲラが現れ、せっせと穴掘りを始めました。

まだ穴はそれ程深くないようで、ご覧のような無理な体勢で一生懸命掘り進んでいます。

30分ほど頑張っていると別のコゲラの声がして、相方が姿を現しました。 交代時間のようです。

これまで働いていたコゲラは安心して巣を離れ、

何処かへ飛び去って行きます。 交代はこの様に相方が到着するのを待って行われるとは限らず、待ちくたびれて先に飛び立ってしまうケースもよく観られます。 この日は久しぶりの晴天で、急ピッチで作業を続けられる日に当たったことが私には幸いだったようです。

翌日、ソメイヨシノもずいぶん賑やかになってきました。

今日もコゲラはものすごい勢いで掘り進んでいます。 木屑がものすごい勢いで飛び散っています。

コゲラの身体がすっぽりと隠れるようになりました。

・・・と思いきや、さらに入って行き、ついに姿が見えなくなりました。

次にコゲラが姿を現した時、なんとそれはお尻ではなく頭でした。 もう奥で方向転換できるほどのスペースが掘られているということになります。 内部は観られないので想像を逞しくするしかないのですが、単純に考えればアプローチ部のトンネルを掘り終え、巣の本体部(参座)に到着したと考えられます。 内部に溜まっていた木屑が外にまき散らされます。

これ以降、作業の中心は巣の内部に移ります。

巣の中から掘っている音は響いてきますが、外から見える姿は木屑を吐き出す姿と交代にやって来る相方を待つ姿だけということになります。

時として交代要員の相方が早く到着した時には満開に近づいた桜で餌を探す余裕を見せます。 満開の桜と青空にコゲラもよく似合います。



三月も終わりに近づくと、内部で樹を突く音も頻度もめっきり減ってきました。 もう本体の主要な工事も終わって、人間流に言えば内装を整えているのだなと感じさせます。 そろそろ産卵が始まってもおかしくなさそうです。

ここ数日、樹を突く音も聞いていませんし、相方と交代する場面も見ていません。 私の勝手な想像では、巣に出入りしているのはメスだけで、オスは出入りしていないのではないかと思っています。 コゲラは4~6個の卵を産むのが標準だと記されています。 巣の内部を覗く方法は我々にはありませんが、鳥は一度に一個ずつしか卵を産まないのが普通だとされます。 受精卵という小さな細胞を卵という大きくて固い殻に守られたものに育てるには一日の時間と多大なエネルギーを要します。 単純計算をしても産卵には4~6日を要するわけです。 この間、オスが出来る仕事はありません。 メスが体力回復に出かけている間抱卵をすれば良さそうに考えがちですが、卵が産み揃えられるまでは抱卵をしない方が実はいいのです。 産み終わってから抱卵を始めれば、孵化のタイムラグも小さくなり、先に生まれたヒナに踏み荒らされたりするリスクも小さくなります。 この時期に慌てて温めなくとも卵が死んでしまう恐れもないでしょう。
私の勝手な計算では、産卵ももう終了しても良さそうな時期になりました。 ぼちぼち抱卵に入る頃です。 ここで子育てを行うつもりであることは間違いなさそうなので、無事に成功することを願うばかりですが、私の想像通りだとしても抱卵に14日、そこから巣立ちまでに20日を要します。 まだまだ気の長い話になります。 ハッピーな続編をお届けできるといいのですが。
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- 2018/04/07(土) 00:00:44|
- 野鳥
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