カモ類の多くは、北地で繫殖し、越冬のために日本にやって来る冬鳥です。 色々調べてみると、大部分の野鳥とは異なる興味深い鳥であることが判ってきました。 そのせいもあって、今年はカモの写真を数多く撮影したので、私なりに理解できた越冬地での暮らしぶりを纏めてみます。 今回はもっとも普通に観られるマガモ属に絞ってみます。
<換羽> 越冬地では目の覚めるような鮮やかな姿を見せるカモのオスですが、日本にやって来る時にはエクリプスと呼ばれるメスに似た地味な姿でやって来ます。 マガモ属の代表的なカモのエクリプスから繁殖羽に変身する過程についてはこれまでに紹介したので、そちらを参照してください。
到着したカモが、まず行うのは見慣れた繁殖羽に換羽することです。 (越冬地の姿を繁殖羽とするのは誤りだという説もあります。 この説明は私の能力を超えますので省略します。) そもそも繁殖を行わない越冬地で、目立つ姿に変身するのは何故でしょう? それは繁殖する相手を越冬地で探すためと思われます。 要するに越冬地での最重要事は婚活であるということです。 長い旅をして寒い繁殖地に行くので、越冬地で嫁さん探しを済ませておくのがベストだという判断を選んだのでしょう。

データ不足で、これまでに紹介できなかったオカヨシガモの換羽途中と思われる写真です。

同じくヨシガモの換羽途中です。

成鳥の大部分が換羽を終えるまでも、食事は必要なので、三々五々に餌取りを行います。 マガモ属は潜水は得意ではないので、水面に逆立ちして届く範囲の植物を採取します。 この姿勢はマガモ属には共通だと思われます。

浅い場所の植物は、泳いだまま食べます。
<求愛行動> いよいよパートナー探しですが、マガモ属の多くは、集団見合いでパートナーを探すようです。 私が通う池は大きいのですが、時期によって集まるカモの数が変化しているようです。 未婚者が集まってきて、合コン・パーティーが行われているのでしょう。 一般的には、少数のメスを多くのオスが取り囲み、自分の魅力を競い合います。 そこでメスに気に入られたオスがパートナーを確保できるのです。 (観察した印象では、これがパートナー選びの唯一絶対の方法とは思えませんが…。)

ヒドリガモの求愛行動。 この動作は、あまり他のカモには見られないような…・。

オナガガモの求愛行動。 自慢の長い尾をピンと立てています。

殆どのカモに観られる見悶えポーズ。

これも一般的な胸反らしポーズ。 躰を大きく見せて、強さをアピールしている?

尻あげポーズ。 どうも尾部の模様が魅力的なようです。

興奮してくると、ライバルを追い出そうとする不届き者も出てきます。 強さを誇示しているつもりかもしれませんが、必ずしもモテているようには見えません。

今年は異常に多いハシビロガモですが、一向に婚活パーティーが観られません。 もしや・・・と思い当たって調べてみると、やはり以前紹介した集団採餌がそれだったようです。 オスが小集団で水を掻き回し、中心に1~2羽のメスが入り、メスが気に入ったオスから口移しで餌をもらうとカップル成立というシステムのようです。 これも求愛給餌です。

その後、カップルで食事をする姿が目立つようになりました。 パートナーを確保できなかったハシビロガモは、他のカモの様に逆立ちしている姿が目立ちます。

コガモの喧騒も下火になり、カップルで食事をする姿が目立ってきました。

カップルの逆立ち。 旅立つ日も遠くないかもしれません。
<交尾>
これで越冬地での仕事は終えたはずですが、時折、カモの交尾を目にするようになりました。 本来は越冬地では観られない筈の行動ですが、男と女の世界では、色々なことが起こるものです。 メスの体内には精子を貯蔵する場所があるようなので、断言はできませんが、いかになんでも早すぎるように思われます。 たぶん疑似交尾と呼ばれるものでしょう。 お互いの愛の確認? 予行演習? 下種の勘繰りをするよりは、珍しいものが観られた幸運を喜んでおきましょう。
これまで観られたものから、これも一般的なパターンがあるようです。

カップルが向かい合って、お辞儀するように首を上下させていたら、カメラの電源を入れておきましょう。


メスが合意すると、水面に横たわります。 オスがしずしずと近づき、メスの背中に乗ります。

一般的にオスはメスよりも大きくて重いので、メスの体はほとんど沈んでしまいます。

これではメスのお尻は水中なので、オスはメスの頭を押して沈めます。 これでメスのお尻が浮き上がるので、交接が可能になります。
無事に交接が終わると、オスは横滑りにメスから降ります。 普通、オスはメスの周りを一周して泳ぎ去ります。 大体はこのパターンで終了です。
三月になると、カモの群れも寂しくなります。 すでに繁殖地に向かい始めているのでしょう。 種によって、個体によって、渡りの時期にはばらつきが大きいようですが、冬の時期を慰めてくれたカモたちとのお別れも近づいてきました。 今年は少し早めのような気がするのが心配ですが、来年も沢山来てくれることを祈ります。
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- 2017/03/10(金) 22:38:57|
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